未来を売る

小説

AIが労働を代替しベーシックインカムが導入された未来、それは明るい未来なのだろうか。

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未来を売る

毎月一日、政府から全国民に「百テラ」が配られた。AIを動かすための計算資源である。自分で使って商売を始めてもいいし、企業に売って生活費にしてもいい。

父は毎月、届いた百テラをその日のうちに売った。家賃と食費を払えば、少しだけ残った。

「今月は売らないで」

十二歳の娘が言った。絵を学習させて、物語を作るAIを育てたいのだという。

「成功する保証はあるのか」

娘は黙った。保証などあるはずがない。父は売却ボタンを押した。

十八歳になった娘は、AI起業家向けの計算資源ローンを申し込んだ。審査画面には、幼少期からの「自己利用履歴」が表示された。

利用実績、ゼロ。
創造実績、ゼロ。
信用可能性、最低。

融資は却下された。

その夜、政府広報が流れた。

〈すべての国民には、平等に未来が配られています〉

娘は端末を閉じ、翌月分の百テラを売りに出した。買い手は、幼い頃から一度も自分の計算資源を売ったことのない同級生の会社だった。

入金通知を見ながら、娘はようやく理解した。

国は未来を配っていたのではない。
未来を売る権利を、平等に配っていたのだ。

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