phaさんの著書『パーティーが終わって、中年が始まる』の中で、「どんどん自動化されていく」という章がありました。
どんどん自動化されている現状が少し寂しい。もう少し人間扱いしてほしい。けど、AIが進化したら薄れるのかな?という内容が面白かったです。
この話を読んでいる時、確かに、人との繋がりを買うって凄くお金がかかる事柄かも知れないと思いました。
スナックにいる人々
私はサラリーマン時代に、もしスナック甲子園があったら、県大会ベスト4に行けるくらいにスナックに通い詰めてたのですが、スナックはお客と店員さんの世間話ができる空間です。
スナックの常連さんは、誰かと話したくて通っている場合が多かったです。
酒は安酒で、家で飲んだ方が圧倒的にコスパはいいのですが、それでもスナックという空間におじさんは吸い寄せられていました。
多くの人は、誰かと話したい欲求がとても強いので、そのためにかなりの金額を出せるのです。
アリバイが崩れてきた
誰かと話したい欲求は、今までは、『何かのついで』というアリバイがなされていました。
例えば、ファミレスでの店員との会話だったり、スーパーでの世間話、バー、介護、病院などです。
これらは、目的のついでに人と話すことができました。
しかし、「すべてが自動化されていく」でも書かれていた通り、これから急速にあらゆるサービスが自動化され、人と話す機会がなくなります。
この時に初めて、人々は、本当は自分は誰かと会話したり接触したかったのだと気づくのでしょう。
その傾向は徐々に現れていると思います。
この記事では、セルフレジを導入したら売り上げが落ちたと書かれています。
理由は色々書かれていますが、私は、これは私たちが思っている以上に、人が誰かと接したいという隠れた願望があるのでないかと思っています。
ドラッグストアの経験
私が学生時代にドラッグストアでバイトをしていた時に、いつも沢山買い物をしてくれるお婆さんがいたのですが、その人はいつも「〇〇さんはいる?」と、パートの女性を指名してレジ打ちをしてもらっていました。
そのお婆さんは、そのパートの女性と会話するために通っていました。
このような人が今後ますます増えるのではないでしょうか?
接客最強のスーパー
ですから、今後サービス業をやる人は、完全自動化の流れに対して逆張りで、顧客をお金を払ってくれる存在として捉えるのではなく、一人の人間として扱う方が成功するのかも知れないですね。商品の値段を上げて徹底的に世間話をするような業態をやるとうまくいくかも知れません。
かつて、そのような最強の接客を行うスーパーが海外にありました。
これは、競争戦略について書かれた書籍『競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略』で紹介されていたスーパーなのですが、名前をスーパークインと言います。
アイルランドの会社で、残念ながら2011年に本業とは関係ない不動産投資で損失を出して倒産しています。
しかし、この会社の接客は非常に素晴らしく、品質は良いけど高い商品を取り扱っても人気があったそうです。
従業員が商品のことを熟知しており、お客さんが何か探していると積極的に声掛けをし、最適な商品を選んでくれたそうです。
スーパークインは、創業者のクインが胸に描いたイメージを、そのまま形にした企業だ。店内にあるすべてのものは、顧客に質の高いサービスを経験してもらうためにある。大きなことから小さなことまで細部にわたって、そこまでしなくても、と思うくらい顧客中心なのだ。
例えば、ブロッコリーが並んでいる棚のそばには、ハサミが置かれている。買い物客が茎の硬い部分をカットしてから重さを量り、食べる分だけにお金を払えるようにしている。また、野菜や果物の棚の上には、生産者の写真が貼られ、責任者は誰なのか、顧客に伝えている。
競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略 p.144
生産者の顔を出すのは、最近ではイトーヨーカドーの野菜とかでも見られますよね。もっと前からスーパークインはやっていたそうです。
これからの日本はインフレ、人口減の圧力によってあらゆるものが自動化されると思いますが、このようなサービスを提供する会社が、もしかするとAIの自動化時代に再び人気が出るような気がします。
終わり。