運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」【書評】

読書
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『運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」』を読んだ感想です。

今年一番の当たり本

個人的に、現時点で今年NO.1に読んでよかった本です。

まず驚くのが、本書のテーマが「運」である点です。

著者は、ドンキホーテの創業者ですが、ずっと「運」について研究しています。

運は私にとって永遠のテーマであり、その運について語るのを本業(事業経営)以外の最後のライフワークにしようと思っている。そういう意味で、本書『運』は、いわば私の”遺言”のようなものだ

運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」

「運」と聞くと、風水とか占いとか願掛けとか、何となくスピリチュアル方面の話かなと思いますが、著者はそのようなモノを一切信じていないそうです。

本書を全部読めば、全ての人が「運」について真剣に考える必要があることがわかります。

運とは

本書によると「運」とは

  • 運とは、その人が成し得た人生の結果そのもの。
  • 運とは、自らの行動によって権能する”変数”のようなもの。

としています。

運がいいとは、良い結果が得られたから言われることです。そして、この運は、自分の行動によって変化する存在である。とします。

また、短期的な運は「ツキ」とよび、中長期的な運を「運」と呼びます。本書の言う「運」は中長期の運を指します。

例えば、サイコロを1回だけ振った場合、サイコロの目で6が出る確率は6分の1にはなりませんが、数千回サイコロを振れば、確率は6分の1に収束します。

つまり、中長期の運とは、良い結果が得られる可能性が高い行動を沢山することで、期待値をプラスに収束させる行為ということです。

このような、著者が独自に構築した理論が本書では書かれてます。

何となくそうだと思っていたことを言語してくれている

自分で言うのも何ですが、私も結構『運』がいい方で、何となく「運が向く行動とか思考があるんだろうな」とは思っていましたが、本書ではその「何となく」がキッチリ体型的に言語化してくれています。

つまり、本書を読んで実践すれば、世の中に存在する『運が良い人』に人工的に近づくことができるのです。

これは、もう発明レベルです。

今まで学んできた知識とは全く独立した理論体系の学問を学んでいるような気がしました。

「運の三大条件」

「打率と打点の交差主義比率」

など、著者が発見した理論も満載です。

このブログの読者にはハマる内容だと思うので、ぜひ読んでほしいです。

ベイズ統計的思考

これは本書から逸脱した感想ですが、著者の運の掴み方は独特ですが、今までの学問で言えば、ベイズ統計的な思考だと思いました。

ベイズ統計とは、新しいデータを追加し、その確率の変動を計算していく統計学です。

例えば、あなたがいちご狩りに行って、2個のイチゴを食べたら、両方とも非常に甘かったとします。

このとき、ベイズ統計を使ってこのイチゴハウスの中のイチゴが甘い確率を計算することができます。まず、イチゴが甘い確率についての初期の信念(事前分布)を設定します。たとえば、イチゴが甘い確率が0.5(50%)だと考えることができます。

次に、2個の甘いいちごを食べたデータを使って、事前分布を更新し、新しい確率(事後分布)を計算します。ここでは、最初の2個のデータに基づいて、ハウスのイチゴが甘い確率は高くなるでしょう。

しかし、もし3個目のイチゴを食べて、それが非常に酸っぱかったら、ハウス全体のイチゴが甘い確率は再度更新されます。この新しいデータによって、甘い確率は下がります。

従来の統計では、このように後からデータを追加して、その都度確率を更新することは難しいかもしれませんが、ベイズ統計ではそれが可能です。

ベイズ統計の本質は、新しいデータを使って既存の信念を更新し、確率を動的に変化させることです。

さて、ここで本書の『運』に戻りますが、著者が運を上げる方法にベイズ統計的なアクションをとっていることがわかります。

「見切り千両、再挑戦万両」 – 事前確率より事後確率がどんどん悪くなり、成功確率が下がってきたら今後も悪化する確率が高いので、損切りをする行為。

「打率と打点の交差主義比率の最大化」 – 勝つ確率の高い行動を繰り返し取り続ける行為。

「堅守速攻」ではなく「速攻堅守」 – 新しいデータを即時に手にいれ、事前確率から事後確率に移行し、その確率の精度を上げる。

「断行熟慮」 – まず行動し(新規データを増やし)、そのデータを元に新しい事後確率を計算し、経営判断をする。

「時間のテスト」 – 試行の数を重ね、事後確率の精度を上げる行為

「前始末」 – 先に面倒ごとの目を摘んで、事前確率を上げる行為

などは、まさに事前確率を予想し、実際に行動して確率を修正し、事前確率より悪い結果になりそうにあったらサッと撤退する戦略であり、ベイズ統計的な発想です。

どちらにせよ、著者がいなかったら、このような本は絶対に生まれなかったと思いますし、この本を読めて本当に”運”が良かったと思います。

終わり。

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