生涯投資家【書評】

読書
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村上世彰さん著の「生涯投資家」を読んだので書評と感想です。

世間を騒がした村上ファンド

村上世彰さんといえば、ライブドア事件のインサイダー取引の容疑で逮捕され、有罪判決を受けた人です。その人は、どうして投資家になり、敵対的なTOBを行ったり、アクティビストとして活動したのかを語っています。

父が投資家で幼い頃から投資に馴染みがあった

村上さんは小学校3年生から投資をスタートしたそうです。父が投資家で、お小遣いを100万を一括でもらい、サッポロビールを購入したのが彼の投資人生のスタートでした。

その後、社会人には、父からの「国家を勉強するために官僚となれ。」というアドバイスで官僚になり、投資ファンドを立ち上げたのは40歳目前にしてでした。

この本を読んで、まず、この父親がすごい人だなぁと思いました。歳をとっても、「お前には投資は負けない」と村上さんに言ってたようで、まさにお父さんこそ元祖の生涯投資家でした。

コーポーレートガバナンスの浸透

村上さんの一貫した投資のテーマは「コーポレートガバナンスの浸透」です。コーポレートガバナンスとは以下のようなものです。

会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みのこと。 

コーポレート・ガバナンス(企業統治)

村上さんが官僚して働く時に、日本の上場会社が資本を効率よく活用できておらず、経済が停滞する原因となっていると気づきました。

そこで、官僚としてではなく、実際のプレイヤーとして日本の株式市場に働きかけることにしました。

アメリカでは物言う投資家は、1980年には活躍していました。その姿を見て、彼も日本でファンドを設立しようとしたのです。

オリックスの宮内さんとの出会いなどを経て、1999年にファンドを設立しました。

敵対的TOB

村上ファンドが有名になったのが、日本初の敵対的TOBを行ったためです。

相手は昭栄という会社でした。昭栄は会社が持つ資産に比べ株価の時価総額圧倒的に低く、対策を講じていませんでした。

そこから、資産をうまく活用できていない様々な企業にアクションを起こします。

東京スタイルへのプロキシーファイト、日本放送とフジテレビの歪な資本関係の是正、西武鉄道の再編、阪神電鉄の買収などです。

このような活動の中で、インサイダー容疑で捕まってしまいますが、間違いなく日本にコーポレートガバナンスの考え方を広めたと思います。

期待値

最後に、村上さんの投資の考え方が勉強になったのでメモしておきます。

彼は、投資をするかどうかの投資判断を常に「期待値」で考えるそうです。

期待値が「1」を超えるかどうかが判断基準です。

例えば、50パーセントの確率でゼロになるとしても、50パーセントの確率で10倍になるなら、期待値はゆうに1を超えるので投資をする。ということです。

また、内部収益率(IRR)が15%以上が投資の基準だと書かれていました。

一般的な投資家は、期待値が高くても損失が大きすぎる場合は投資できない場合が多いそうですが、彼は期待値が高ければ最大損失がある程度大きくてもリスクを取るそうです。

感想

村上さんの一貫した投資スタイルがわかってとても勉強になりました。

ライブドア事件の印象が強かったので、IT企業の目利きは全くできないと書かれているのが意外でした。

今の日本は、良くも悪くも村上ファンドが主張したコーポレートガバナンスが浸透してきました。低PBR、低ROE企業の是正を東証が指導するなど、昔では考えれなかったことです。そう考えると、村上世彰さんが与えた影響は本当に大きかったのだなと思いました。

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