ユニークで実践的な経営理論が書かれた本「競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」を読んだ感想です。
競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略 フレッド・クロフォード
5、4、3、3、3を目指せ
ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略とは、企業経営のビジネス要素を「経験価値」「商品」「アクセス」「サービス」「価格」の5つに分け、市場を支配できるほどのレベル(5点)を1つ、他社と差別化できるレベル(4点)を1つ、そのほかを業界水準(3点)を達成する戦略のことを言います。
このバランスこそが効率よくライバルと差がつけることでき、消費者に選んでもらえる企業の黄金比だというわけです。
星野リゾートの星野社長がYoutubeの動画でこの本の話をしていて、面白そうだと思って読みましたが、とても勉強になりました。
星野リゾートでは、「経験価値」を5点、「アクセス(買いやすさ)」を4点、その他を業界水準3点を目指しているそうです。
ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略の概要
先ほども述べたように、ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略は、「経験価値」「商品」「アクセス」「サービス」「価格」の5つのビジネス要素に分類されます。
これら5つの総合点と各配点のバランスが競争優位性を得るためには重要だと説いています。
以下は、各ビジネス要素の概要と私が5点だと思った会社名を書いたものです。
経験価値
経験価値は、消費者が「敬意を払われている」と感じ、他の企業のサービスを使うなんてあり得ないと思えるほどにファンになってもらうことです。
企業例)スターバックス、ディズニーランド
商品
商品の5点は、消費者が求める品を揃えていることはもちろん、インスピレーションを与えるレベルである必要があります。イケヤに行くと、様々な家具のレイアウトを見るとワクワクしますよね。
企業例)イケヤ
アクセス
アクセスは、その言葉だけ聞くと立地のことを思い浮かべますが、立地だけの話ではありません。マクドナルドは最高の立地に店を構えていますし、さらにCMを頻繁に打ってふとお店に入りやすくしたり、最近だとモバイルで注文できるようにしたり、とにかくアクセスを高めています。買いやすさとも言い換えられます。
アマゾンは自宅ですぐに商品を購入できます。本屋に行くよりずっとアクセスしやすいです。
企業例)マクドナルド、アマゾン
サービス
サービスの市場支配レベルは、消費者が望むものを最高レベルで提供できることを言います。人々はそれぞれ求めるものが異なるので、その要求に応えるには従業員の対応の質が大きく影響します。返品や解約をわざと難しくしているような企業はサービス志向ではないことは明白です。
企業例)ヨドバシカメラ、Appleストア
価格
価格の市場支配とは、商品を激安の値段で販売することではありません。実際に業界最安値である必要もありません。
つまり、消費者に「この会社の商品はぼったくり料金ではなく信頼できる値段だ」「業界最安値だと信じられる」という意識が浸透している状態を作り出せているかどうかが重要です。いわば価格決定の業界のリーダーになることです。
企業例)ダイソー、ドンキホーテ
どのポジションを目指すかを決めることでサービスの方向性が定まる
本書では「経験価値」「商品」「アクセス」「サービス」「価格」の配点が5、4、3、3、3のスタイルが、競争優位性を築くことができると主張しています。(ちなみに、2点や1点ももちろん存在しますが、この点数は決して取ってはいけません。2点や1点があるだけで消費者はリピートしてくれません。)
「全てを最高レベルの5点にすれば良いじゃん」と一見すると思うのですが、それは「そもそも不可能である」「消費者に自社の魅力をうまく伝えられない」とされ、本書では「一流の神話」と呼ばれています。
例えば、最高級レストランなのに料金がファストフードのような値段だと、消費者は「このレストランは本当に高級レストランなの?」と疑われます。コンセプトがわからないからです。
ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略とは、自社のサービスの魅力がどこなのかを消費者に伝える機能を持つのです。
昔なら消費者はどのサービスを利用するかの選択肢は多くありませんでしたが、現代では高品質のサービスが乱立しています。その中で自社のサービスを選んでもらい、満足してもらえるには、ユーザーが期待するものと自社が提供するサービスがマッチしていないといけません。
情報のあふれたこの環境において、消費者は何を求めているのだろう?それは、明確さ、安心、確実性、そして信頼である。人々に必要なのは、自分の選択肢を明確にしてくれて、選択をたやすくし、決めたことを満足させてくれる、信頼できて頼れる誰かなのだ。
競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略 p.34
感想
現代社会では、商品はいいものが当たり前で、そこからどうやって他社ではなく自分のサービスを選んでもらえるかの戦略がイメージできて勉強になりました。
本書を読んでわかったのは、ユーザーが期待しているものを正しく認識し、自分たちが提供するサービスをその期待に正しくフィットさせて、そのストロングポイントを伸ばすことが大事だということです。
よく考えると、全てにおいて大事な戦略ですよね。
例えば、新社会人を例に考えてみると、何の戦力にもならない新卒の若手が会社から期待されているのは、組織に新しい風(鮮度や活気)を入れることです。それなのに元気がなかったり新しいことに挑戦しない保守的な若手だったらガッカリされるでしょう。
自社の強みを出すための実践的な方法がわかり、読んで良かったと思える良書でした。