今回は、スタートアップで読まれている本「トラクション」について書評です。
本書のターゲットはスタートアップですが、個人開発者でも十分参考になると思います。
レビューもそこまで高くなく、中身も一見すると論文のようで取っ付きにくいですが、そこを乗り越えすと素晴らしい内容が書かれていると気づきます。
結論から言うと、私は読んでよかったです。
トラクションとは?
「トラクション」は「地面を掴むことで生み出される推進力」を意味します。
トラクションとは、基本的には顧客需要を表す定量的な「証し」のことです。[最初のトラクションは、]企業向けソフトウェアで言うならば、最初にそのソフトウェアに対してお金を払う2〜3社の顧客であるといえるでしょう。コンシューマ向けのソフトウェアであればその基準はおそらく数万程度のユーザでしょう。(中略)これは最高裁による「ポルノ」の定義と同じです。つまり「見れば分かる」ものなのです。
1章p.3
多くの個人開発・スタートアップは、プロダクトはあってもこのトラクションが足りていません。
トラクションの獲得は、成長を意味します。トラクションを追い求めている企業こそが、スタートアップなのです。
p.4
本書では、トラクション獲得に成功しているスタートアップからヒアリングを行い、その結果、以下のことを明らかにしています。
- スタートアップは19種類のチャネルからトラクションを獲得している。
- その中から実際にうまくいくチャネルを一つ発見している。
そして、このような顧客獲得のチャネルを「トラクションチャネル」と呼んでいます。
また、本書では、上手くいくチャネルは予測が困難であると言っています。
そして、実際にテストを実施するまではわからないため、先入観をもたずに全て検討するべきだと述べています。
長くなるので割愛しますが、そのためのフレームワークも考案しており、その説明があります。
19のトラクションチャネル
以下に、具体的な19のチャネルを列挙し、概要を書いてみます。
- バイラルマーケティング ー 既存ユーザの周囲に製品を紹介してもらうことでユーザベースを拡大する手法
- PR(パブリック・リレーションズ)ー 新聞雑誌、テレビなどの伝統的メディアを通して知名度を高める方法
- 規格外PR ー 何かしら普通ではない、パブリシティ・スタント(売名のための曲芸的行為)によってメディアの注目を集める手法
- SEM(サーチエンジンマーケティング) ー グーグルなどの検索エンジンで検索する消費者に対して行うマーティング活動
- ソーシャル/ディスプレイ広告 ー SNS等のニッチなサイトの広告
- オフライン広告 ー テレビやラジオのCM、屋外広告、インフォマーシャル、ローカル広告(チラシ)が含まれます。
- SEO(サーチエンジン最適化) ー 検索エンジンでのキーワード検索結果に自社のWebサイトを確実に表示させるためのプロセス
- コンテンツマーケティング ー 自社のブログ運営
- メールマーケティング ー メールマーケティングは、顧客の維持と収益化を行うとともに、見込み客を顧客に変えるための最も良い方法の一つ
- エンジニアリングの活用 ー マイクロサイトを構築し無料ツールを配布することで毎月何千もの見込み顧客を獲得している企業がある
- ブログ広告 ー 広告を出すブログの選定
- ビジネス開発(パートナーシップ構築) ー 自社とパートナーの両方に利益をもたらす戦略的パートナーシップを構築するプロセス
- 営業 ー 製品をお金と交換するためのプロセスの構築
- アフィリエイトプログラム ー 高いコスト効率で数十万の顧客にリーチする
- Webサイト、アプリストア、SNS ー Webサイトなどの既存プラットフォームに狙いを定める
- 展示会 ー 特定の業界に関連する企業に最新製品を披露するチャンス
- オフラインイベント ー 小規模の「ミートアップ」から大規模なカンファレンスまで、オフラインイベントを開催する、またはそのスポンサーになることは、トラクション獲得の重要な手段になりえる。
- 講演 ー 講演会の活用
- コミュニティ構築 ー 製品、サービスについて情熱的なコミュニティを構築する
これらのトラクションチャネルから、自社サービスにとって効果的なアプローチ方法を選択し、エネルギーを注入するのがトラクションの獲得戦略です。
自分に当てはめると?
この本を読んで私はどのチャネルを使っているかな?と考えましたが、自分の使っているチャネルがとても少ないことに気づきました。Webサイトとかコンテンツマーケティングなどはやっていますが、「エンジニアリングの活用」なども、私はコードが書けるので、うまく使えればコスパが良く集客できるな。と目から鱗でした。
フレームワークと19のチャネルの理解したいところ
19のトラクションチャネルの中には、よく見聞きするアプローチもあれば、あまり考えていなかった方法もありました。
ただ、これらのアプローチ方法について、しっかり検討して戦略を練ることで、集客方法の可能性が広がると思いました。
自分の個人開発でも早速考えてみたいと思います。