猫又おばあちゃん

オリジナル小説
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私のおばあちゃんは猫だ。

おばあちゃんは、私の家にずっといる猫で、私のお父さんにとってもおばあちゃんで、私のおじいちゃんにとってもおばあちゃんだ。人間のおばあちゃんにとってもおばあちゃんなので、とてもややこしい。

みんなが猫のおばあちゃんを「おばあちゃん」と呼ぶから、私もおばあちゃんと呼んでいる。

おばあちゃんは、猫の中でも、猫又という種類の猫だ。

おばあちゃんは尻尾が2つに別れていて、それぞれが好き勝手に動いている。右の尻尾がクネクネ動く時に、左の尻尾はピンと立っている時もある。

私は、なんで尻尾が別々に動くの?おばあちゃんに聞いてみたら、

「尻尾のことは尻尾に任せているからわからないねぇ」と言っていた。

朝、私が起きると、おばあちゃんは居間で経済新聞を読んでいる。だから経済にとても詳しい。

新聞を読み終わると、テーブルに用意された朝食をゆっくりと時間をかけて食べる。

「急いで食べると体に悪いよ」と、私が急いでご飯を食べようとすると注意してくる。

「けど、小学校に遅れちゃうよ」と私が言うと、困ったわねぇ、とそれ以上は言わないで、自分の食事に戻るのだ。

私が学校に行っている間、おばあちゃんが何をしているかは知らない。けど、小学校が早く終わって学校から家に帰ると、おばあちゃんは家にいない場合が多かった。

「おばあちゃんはどこにいるの?」とお母さんに聞くと、

「さあ、近所を散歩しているんじゃないかしら?」と教えてくれた。

おばあちゃんは、近所に住む猫たちと日中は集まっているそうなのだ。だから、近所の事情にもとても詳しい。

おばあちゃんは、身だしなみにとてもうるさい。

おばあちゃんはいつも念入りに毛繕いをして、おばあちゃんの体はつやつやのピカピカだった。

自分だけじゃなく、

「毛玉がついてるよ」と、私のお気に入りのニットも綺麗にしてくれる。

おばあちゃんは、時々昔話もしてくれた。

私には、おばあちゃんの昔話が、どれくらい昔話なのかわからなかったけど、おとぎ話を聞いているようで大好きだった。

おじいちゃんは、時々おばあちゃんに何かを相談をしていた。そう言う時も、おばあちゃんは昔話をしてくれた。

私にはいつもより難しい話だったけど、昔話をひとしきり聞いたおじいちゃんはパッと表情が明るくなって、

「なるほど。ありがとう、おばあちゃん」とお礼を言っていた。

私の家に遊びに来る人は、おばあちゃんに会って、挨拶をされると、最初はびっくりするけど、すぐにおばあちゃんのファンになっていた。きっと、おばあちゃんの話が面白いからだろう。

みんな、おばあちゃんが大好きだ。

だけど、そのおばあちゃんの様子が最近おかしい。

いつもより元気がないのだ。

みんなが心配して体調を聞いても、

「大丈夫だよ。気にしないで」と言って、どこかに言ってしまうのだ。

おばあちゃんは日に日に元気がなくなっているようだった。

あれだけ丁寧に整えていた毛並みが、ゴワゴワになっている。

日中に出かけることも減っていた。おばあちゃんのお気に入りの窓ぎわの椅子にずっと丸まっていることが増えた。

私は、学校で飼っていたウサギは同じように次第に動かなくなって死んでしまったことを思い出した。

私は、おばあちゃんが死んじゃうのではないか、と夜にベッドに入っている時に不安になった。

私はすぐにベッドから起き、おばあちゃんのいる寝室に向かった。

おばあちゃんは座布団に丸まっていた。

「おばあちゃん、死なないで」と私は言った。

すると、おばあちゃんは丸まったまま片目だけ開けて、言った。

「おやおや、心配してくれてありがとうね。でも大丈夫だから。安心してぐっすりおやすみ」

私は、まだ不安だったけど、おばあちゃんが嘘をつくことはなかったから、信じて寝ることにした。

その数日後、おばあちゃんが突然元気になった。

動きは軽快で、しばらく荒れていた毛並みも元通り、それどころかより綺麗になっている。

「心配かけたね」とおばあちゃんは言った。

私は、今まで通りのおばあちゃんで安心した。

私はおばあちゃんに抱きついた。暖かい。

そして、一つこれまでと違うことに気づいた。

おばあちゃんの尻尾が3つになっていたのだ。

「おばあちゃん、尻尾が増えてるよ」と私が言った。

するとおばあちゃんは笑って言った。

「あらあら、尻尾のことは尻尾に任せているからね。けど、まだまだ頑張れってことかもね。」

どちらにせよ、私にとってはどうでいいことだ。おばあちゃんには、私の子供にも、孫にも、おばあちゃんになってもらわないといけないんだから。

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